月々のお手入れ

11月のお手入れのポイント

1.枝葉の整理:咲きがら摘みと病葉除去

2.施肥:来春に備えて株の充実を図る

3.病害虫防除:黒星病治療とハダニ退治

412月以後の準備:大苗の注文や肥料・赤玉土や腐葉土などの購入

 

1.枝葉の整理

 関東以西の暖地では11月いっぱい花が咲きますが、秋花を堪能した後は来春まで花とお別れです。ただ、最近は温暖化の影響でしょうか、12月末までこぼれ花が咲いて楽しませてくれます。寒さに向かって木を充実させなければと、これらの花を無理に切る必要はないと思います。十分堪能してください。

 バラの木は寒さに敏感なので、冬の気配を感じると地中の根は最後の力をふりしぼって肥料を吸収し、葉で作られる養分は、これまで送り続けた生長や開花のための葉や花ではなく、冬越しと来春の花を咲かせるための養分を蓄える根元部分に転送し始めます。これを手助けする意味で、咲きがらを早目に切ります。シーズン中のように花枝は長く切らず、花首だけ切り葉を多く残して、光合成産物の量を少しでも増やすようにしましょう。もし新芽が伸び出したら、面倒でなければ栄養分の無駄遣いになるので、早目に指で取り去ってください。

 ただし、黒星病に冒された葉は残しても治らないので、徹底的に取り除き、来春まで持ち越さないことが大切です。病葉を取るとすべての葉が無くなることもあるので、木のために悪いのではないかと、残す人も多いようです。根元に蓄える養分は不足しますが、病菌を持ち越すことよりは良いことです。   

黒星病がひどい時は、若い枝に病斑が出ることもあります。黒星病の枝は、残しても病菌を撒き散らすだけなので、惜しがらずに切り捨て、病葉や病枝を庭に残さず、ゴミとして処理してください。黒星病菌を残さないために、葉が無くてもサプロールやマネージの散布を怠らないことが大切です。

 ウドンコ病も大敵ですが、この病気で枯れることはありません。あまりひどく冒されている葉は切除しておきましょう。

 私の庭もそうですが、毎年のように黒星病に悩まされている方の場合は、ほとんど自家培養?しているようなものです。病葉は、見つけ次第葉柄ごと摘み取り、落葉も拾い集めて、バラ園をきれいにしておきましょう。翌年の発病が激減するはずです。

 害虫では、なんと言ってもハダニ退治の最後のチャンスです。ハダニに悩まされた方は、11月中はまだ葉裏にいることがあるので、ルーペで確認したら、この時期徹底的に殺ダニ剤を散布してください。バラを加害するハダニ類は、カンザワハダニ、ナミハダニ、ニセナミハダニの3種ですが、前2種の被害が大きいようです。カンザワハダニとナミハダニは12月に入ると、葉裏から根元の古い樹皮の下などに移動して、寒い冬に備えます。ハダニが越冬態勢に入る前に、たたいておくのがコツなのです。

 この時期は多少薬害が出てもあまり支障はないので、噴口を葉裏に向けて、薬液が少ししたたり落ちる位丁寧に散布することが肝心です。

 12月頃根元の古い樹皮をはがしてみると、真赤なハダニが身を寄せ合って、ぬくぬくと休眠しているのを見つけることがあります。樹皮下に入ったハダニは、薬剤散布はなんのその、平気で越冬しています。

 ここ45年カイガラムシが増えているようですが、バラに寄生するのはバラシロカイガラムシです。原因はよく分かりませんが、薬剤散布の影響でカイガラムシの天敵であるヒメアカホシテントウをはじめ、種々の小型のテントウムシなどが減少しているのではないかと思われます。対策としては、原始的ですが歯ブラシやワイヤーブラシで根気よくこすり落とすのが一番です。冬期の石灰硫黄合剤やマシン油はよく効くのですが、バラには登録されていません。これまで農薬取締法に構わず使用されていましたが、違法なのでやめるようにしましょう。

 シーズン中に使用できる薬剤に、マシン油スプレーのボルンがあります。あまり効果が挙がらないような気がしますが、ふ化直後のフワフワした綿毛が急に増えたように見える若幼虫の時をねらって、根気よく散布してください。

 薬剤の使用については、バラ及び花き類・観葉植物に登録のある薬剤を使用し、その範囲内でどうすれば効果的かを考えましょう。

 例えば、石灰硫黄合剤については、麦類、落葉樹、なし、びゃくしん、りんご、もも、くり、かき、みかん、茶、桑などには登録されていますが、バラは入っていません。バラにも古くから使われ、効果があるのは分かっているのですが、違反は違反です。自己責任で使用してくださいなどと述べられている記述がありますが、それは間違っています。

 

2.施肥

 5月の1番花から11月いっぱいまで、休むことなく咲き続けて楽しませてくれたバラも、さすがにバテ気味です。それでも秋花の蕾が色づく頃から、休眠に入る2ヶ月ほどの間、バラの木は来春に向けてせっせと肥料を吸収し、寒さに耐えられるよう木の充実に懸命です。

 11月に入ったら、花が咲いていてもなるべく早くお礼肥えを与えます。それで花の咲き方が狂うこともありません。高度化成肥料(例えばチッソ:リンサン:カリが15:15:15のもの)なら1株当たり2030gほど根周りに撒いて潅水します。11月中に2回位撒いてください。もちろん普通化成肥料でも結構です。この場合は肥料成分に応じて、施肥量を増量してください。ちなみに化成肥料とは、チッソ、リンサン、カリのうち2種類以上の肥料成分に化学的操作を加えたものです。2成分以上の合計含量が30%未満のものを普通化成肥料、30%以上のものを高度化成肥料といいます。

 肥料成分の割合は、リンサンが少し多いものがよいのですが、あまりこだわらず入手しやすいもので結構です。

 いずれも速効性のものがよく、施肥量はチッソの含有量に合わせます。いつものように施肥後ただちに十分水やりすることも大切です。肥料は水に溶けて初めて効くことと、少量の雨で濃い溶液が根周りに行き、根当たりするのを防ぐためです。

 

3.病害虫防除

 枝葉の整理の項でも触れましたが、黒星病の蔓延を抑えることができたでしょうか。すべての葉が無くなっても諦めないでください。若い茎枝に感染して越冬することもあるので注意しましょう。

 害虫では、気温の低下とともに大部分の被害は少なくなるのですが、バラに被害を与えるカンザワハダニや、ナミハダニとニセナミハダニはしぶとく残り、カンザワハダニとナミハダニは幹を伝って根元の古い樹皮下にもぐり休眠越冬します。

 また、ニセナミハダニは暖地では冬眠せず、付近の雑草などで越冬し、バラの発育に合わせて移動してきます。雑草をこまめに抜くこともダニ退治には大切なことです。

 ハダニの駆除方法については、6月の手入れにも書きましたが、バラ及び花き類・観葉植物に登録のあるダニトロンフロワブル、コロマイト水和剤、ダニカット乳剤などを、ローテーション散布すると効果が挙がります。コロマイトが効くからと続けて使用するのは避けてください。同じ薬剤を続けると、その薬剤に抵抗性の強いハダニが増えて、手に負えなくなります。薬剤の説明文にも使用回数は年2回ほどのものが多いのでよく読んで守ってください。

 尚、殺ダニ剤は、必ずルーペなどでハダニを確認したら散布しましょう。ハダニがいないのに散布すると無駄になります。

〈薬剤調合例:水1リットル当たり〉

          (原則として10日おきに散布)

 オルトラン水和剤        1g       1000倍(殺虫)

 又は、アドマイヤーフロアブル  0.5g   2000倍(殺虫)

 上記2種を交互に使用するとよい

 ダコニールフロアブル      1g     1000

                         (ウドンコ病・黒星病)

展着剤             0.2g     5000

※病気が出た時(上記に追加又は単独で)

 ラリー乳剤           0.33g    3000

                         (黒星病治療)

 又は、マネージ水和剤      1g       1000

                         (黒星病治療)

 トリフミン乳剤         0.5g     2000

                         (ウドンコ病治療)

※ハダニを見つけたら、次の殺ダニ剤の中から1種類を選んで上記に追加又は単独で散薬

 ダニトロンフロアブル・コロマイト水和剤

 ・ダニカット乳剤

 【倍率は説明書を見てください】

  

  • 上記の薬剤は、殺卵・殺幼虫・殺若虫・殺成虫すべてに効きます。

  • 展着剤は1種類でも乳剤が入っていれば、使用しないでください。

    展着効果が弱くなることがあります。

     

    412月以後の準備

     バラづくりには‘バラの師走は11月、12月は新年’という格言のようなものがあります。12月の新年に備えて今年1年の栽培を振り返ったり、バラ園の改植、大苗の注文や、肥料・赤玉土・腐葉土・牛糞の購入など早目に態勢を整えておくことが大切です。大苗の通信販売による購入はあまり遅れると品切れだったり、不良苗だったりすることがあります。

     今月は反省材料を1つ書いてみます。

     私の庭は普通の住宅地で、栽培面積は正味20坪ほどの狭い場所です。しかも50年以上客土もせずに使い続けています。15年程前から毎年土壌分析を行っていますが、リンサン、カリ、カルシウム、マグネシウム、PH(酸性度)、CEC(保肥力)などが主で、微量要素の分析は行っていませんでした。昨年から依頼した業者は、これらの分析はもちろんチッソのほかに微量要素の分析も詳しく行ってくれました。可給態鉄、交換性マンガンの2種類です。

     鉄は植物体内の含有率が微量元素の中では最も高い部類に属します。光合成による光エネルギーの捕捉をはじめ、葉中になくてはならない大切な成分です。

     マンガンは鉄と同じように葉緑体中に存在し、水の光分解による酸素放出に関して重要な機能を営んでいます。

     分析結果は、予想していたこととはいえ驚く程の欠乏状態でした。鉄は標準値が1030のところ分析値3.0、マンガンは標準値が1030のところ分析値1.0、鉄が下限値の1/3上限値の1/10、マンガンが下限値の1/10上限値の1/30という結果です。

     いずれの要素も天然に存在するものだから、堆肥や腐葉土でかなり補えると思い込んでいたのが大間違い。 重要な微量要素がこんなに欠乏していたら、薬剤散布に大変な思いで精を出しても、健康なバラには育たないのは明白です。これまでは分析結果に基づいて、自分で肥料計算をしていましたが、とても面倒なことでした。最近は分析結果に基づいて施肥量まで指示してくれるので、非常に便利です。毎年とはいわなくとも、時々土壌分析してみては如何でしょうか。講習会などで時々聞かれるのは、PH(酸度)のことをテレビの園芸番組で見ましたが、どうやって測定するのですか?PHが合っていないといけないそうですが、調整方法が分りません、という質問です。

     こちらも考え込んでしまうのですが、テレビは信頼すべき教科書と認識されていますから、私が経験に基づくまともなことを言ってもすぐ「~テレビではこう言っていました」と反論され、こちらの言うことはなかなか聞いてくれません。納得してもらうまで長時間を要します。「PHだけの問題ではなく、土壌分析などの総合的な結果をみなければ何とも言えません」と答えています。断片的な知識だけを振り回されても迷惑なのですが、視聴者にすれば仕方ないことかも知れません。

     

    文責・成田光雄